新卒採用で通年採用をしている優良企業の募集情報まとめ

通年採用とは、年間を通じた採用活動です(年間を通じて応募を受付けます)。

新卒採用では新卒一括採用が主流ですが、人材獲得競争が激化する近年においては、新たな人材獲得の手段として通年採用が注目されています。

この新卒採用で通年採用をしている優良企業の募集情報を、学生の方は自身の就活に、企業の方は新卒採用で通年採用を検討される際に、お役立ていただければ嬉しく思います。

新卒採用で通年採用をしている優良企業の募集情報まとめ

ソフトバンク

ユニバーサル採用 新卒採用

“将来を担う人財には、自分の可能性を限定せず、意思を持って主体的に進路を考え、選んでほしい。企業は、必要な時に、必要な人財を採用する。それを実現するのが、本来あるべき普遍的(ユニバーサル)な採用だと確信し、ソフトバンクは2015年より「ユニバーサル採用」をスタートいたしました”

<対象>
入社時30歳未満の新卒/既卒/就業者

ネスレ日本

ネスレパスコース

“企業に選ばれるのではなく、皆さんに主体的に就職活動をしてもらいたい。留学や研究など、より一層学業に打ち込めるように就職活動の時期を選んでエントリーしてもらいたい。多様な人材が協働し、シナジー効果を最大化することによって、組織(ひいては社会)を活性化させたい。このような思いから、 ネスレ日本は2013年度新卒採用より年齢・学歴・国籍などの採用対象を限定せずオープンにエントリーを受付け、選考時期・選考方法を皆さんが自律的に選択できるエントリーコースとして「ネスレパスコース」を実施しています”

<対象>
全学年

ユニリーバ

ユニリーバ・フューチャー・リーダーズ・プログラム365 通年採用

“ユニリーバは通年採用へ。もっと幅広く、もっと自由に。いつでもどこでも、ご自身の未来を考えることができる会社です。1度受験されると、1年後まで本選考においても再受験はできません。1年経っていれば、何回でも応募することは可能です”

<対象>
国内外の大学1年生~既卒3年目(就業経験は問わない)、国内外の大学院修士課程・博士課程の方

ユニクロ

通年採用

“一人ひとりが仕事について真剣に考え、主体的に行動し、納得した将来が送れるように、ユニクロでは、一年中いつでも応募を受けつけています。学年、新卒・中途、国籍を問わないオープンな採用方法にすることで、みなさんが、自分にふさわしい仕事とは何かを考えるチャンスを増やし、一人ひとりが主体的に、自由に応募できるようにしています”

<対象>
全学年

ヤフー

ポテンシャル採用

“ヤフーは2016年10月から「新卒一括採用」を廃止し、新卒、既卒、第二新卒など経歴にかかわらず30歳以下の方であれば応募できる「ポテンシャル採用」として、通年採用を行っています。これまでの「新卒採用」と就業経験を重視する「中途採用」では、第二新卒や既卒などの方に対して平等な採用選考機会を提供できないこと、また昨今、海外留学生や博士号取得者など就職活動の時期が多様化していることから、従来よりも柔軟な採用の枠組みが必要であるとヤフーは考えています”

<対象>
新卒・既卒・就業者(応募時30歳以下かつ入社時18歳以上)

メルカリ

よくあるご質問

“メルカリは国籍や学歴(学年、学部、学科)など一切不問で通年採用を実施しています”

<対象>
国籍や学歴(学年、学部、学科)など、一切不問

ボーダレス・ジャパン

<新卒採用> 社会起業家育成プログラムRISE

<対象>
社会人経験(正社員と働いた経験)のない方

ユーグレナ

新卒・第二新卒採用

“留学や起業、学外活動など多様化する学生生活おけるチャレンジを妨げない柔軟な採用選考を実施したいという想いから通年採用を始めました”

<対象>
30歳以下

チームラボ

チームラボ通年採用

“チームラボ通年採用は、 卒業時期に関わらず、いつでも誰でも 応募できます。

チームラボのアートやソリューションは、様々なバックグラウンドと専門性をもつメンバーによるものづくりの融合によって生み出されています。1人では実現できないものをつくるため、チームラボでは多様性と専門性を重視した採用をおこなっています。だからこそ、一般的な就職活動のスタイルやスケジュールにとらわれず、皆さま1人1人にとって最も都合の良いタイミングで、エントリーできる環境を整えています。卒業する時期や専門にとらわれず、いつでも、どなたでもご応募ください”

<対象>
学歴不問、卒業年度不問、専攻不問

カヤック

新卒採用

“カヤックでは、通年で新卒採用を行っています。

新卒採用と言っても、大学4年生に限りません。既卒で未経験の方、今すぐ大学院を中退して入りたいという方、海外の大学に通っている方、秋卒業の方など、どんな方でもOK。学歴や卒業時期は問わず、その人の本質だけを見つめます。

エントリーや選考の方法もさまざま。また、「明日から入りたい」「3月卒業だけど9月くらいに入りたい」などのご要望にも対応しています”

<対象>
学生

GMO TECH

通年採用

“現在、海外留学生や博士号などの資格取得者、また納得のいく会社に出会えるまでチャレンジし続けたいニーズなどにより就職活動の時期が多様化し、従来の「新卒一括採用」にとらわれず、柔軟な採用の枠組みが必要となってきています。このたび、新卒のみならず、既卒や就業経験を持つ第二新卒の方などもご応募頂ける「新卒通年採用」を開始することで、より多くの方に出会える機会をつくり、ともに会社を成長させる「人財」が集まることを期待しております”

<対象>
入社時の年齢が30歳未満の方で、大学院・大学・短大・専門学校・高専を卒業予定の方もしくは既卒の方 ※全学部全学科対象

リクルート

募集要項

<対象>
1. 2022年4月に入社できること
上記条件のもと、通年でエントリーを受け付けています。

2. 30歳以下であること
既卒業者も就業経験者もOK。入社時(2022年4月)に30歳以下であることを前提に、誰でも応募可能です。

サイバーエージェント

新卒採用

<対象>
・新卒として入社が可能であり、入社時に18歳以上の方
・学年、学科、専攻等不問
・通年採用。入社時期は個別相談
・既卒可、実務経験に関わらずチャレンジしたい方

ソニー

経験者採用

<対象>
求人領域の専門性をお持ちの方、第二新卒応募可、大学院博士後期課程在籍中の方

クックパッド

新卒採用

<対象>
応募時点で学生であること(国籍・学歴不問) ※通年採用を行っているため、エントリーの締切は特に無し

スカイライトコンサルティング

未経験者採用

<対象>
大学生・大学院生及び社会人経験3年以内程度の方

ビービット

新卒/キャリア採用

“ビービットは新卒・中途共に通年で採用しています”

ガイアックス

ポテンシャル採用

<対象>
・学歴不問(新卒者、既卒者、留学生OK)
・入社予定月時点で30歳未満の方

ファインデックス

新卒採用

“通年採用を行っています!”

<対象>
新卒者は3年次の4月1日以降、卒業までの期間であればいつでも応募可能

富士通

採用計画について

“2022年度の新卒採用計画については、短期的な景気変動に左右されることなく、毎年一定数を安定的に採用するこれまでの方針を継続し、前年同様750名とします。採用にあたっては、個々人のキャリア志向を尊重し、職種をベースにした採用の拡充および、2019年度より開始している、大学・大学院の最終学年の学生および既卒者を対象に年間を通じて応募を受け付ける通年採用を実施します”

<対象>
大学・大学院の最終学年の学生および既卒者  

PwCコンサルティング/PwCアドバイザリー

通年採用

“これからは自分でキャリアを描き、自分で実現していく時代。自分のキャリアを会社や他の誰かの決定に任せる人生なんて楽しくない。PwC Japanグループは自身のキャリアにオーナーシップを持ち、主体的に行動する人を全力で応援します”

<対象>
1. 学年、既卒・第二新卒などは一切不問
2. エントリー回数に制限は無し
3. 国内、国外問わずオンラインで選考を実施

KDDI

2021年度よりKDDI新卒採用で通年採用を開始

“通年採用を導入することで、海外の大学で学んでいる学生や外国人留学生や、スポーツなどの活動により十分に就職活動ができなかった学生に対して柔軟に対応できるようになります。さらに、通年採用の導入に合わせて、入社時期も4月だけでなく、4月と10月の2回に変更し、飛び級などでの早期卒業者など個々の学生の状況にあわせて柔軟に入社時期を選択可能にします”

<対象>
既卒者も応募できます。就業経験は問いません。2018年4月~2022年3月に大学、高専専攻科※を卒業(見込み)、大学院修士・博士課程を修了(見込み)の方。

※高専専攻科卒業(見込み)の方は、入社までに独立行政法人 大学評価・学位授与機構より学士の学位を得ることが必須

TDK

通年採用

“TDKは、大学発ベンチャー企業のさきがけとして、新たな技術とモノづくりに果敢に取り組み、独創的な製品を世に送り出してきました。その成長の中で、数々の企業を買収し、多様な文化や価値観を自然に受け入れることによって、「多様性の強さ」を醸成してきました。

近年のM&Aを通じて一層多様性に溢れる企業グループとなったTDKが、真のグローバル企業へと発展していくため、日本国内においては、新卒通年採用を実施します ”

<対象>
以下2点を満たしていること
①入社時35歳未満であること
②大学院・大学・高専を卒業予定の方もしくは既卒の方

日立製作所

通年採用、通年入社の取り組み

“通年入社(365日入社)制度
新卒採用において、原則、卒業後1年以内の自由な時期に入社することを可能とします。大学卒業後、海外留学や長期ボランティア、自己啓発など各自が自己成長のために使う時間を認めます”

コンドーテック

新卒・既卒採用

“当社では、数年前より通年採用を行っています。

その結果、いろんなキャリア、経験を有した面白い人材が多く入社しています。また、そういった人材に敢えて門戸を広げています。海外留学者、既卒者 多重留年生、急遽大学院進学から進路を変えた人、公務員試験に残念ながら不合格となった人、などなどです。

海外の留学生を採用するようになって、日本の就職事情について疑問に感じるようになりました。日本では、経団連が取り決めた就活解禁日というものがあり、その日に一斉に開始され、ほぼ1~2ヶ月であっという間に終わります。日本固有のシステムであり、その間は会社を挙げて、人事部以外の社員がリクルーターとして、季節労働者として、活動を行うイベントです。さらに、新卒絶対主義というか、既卒者、多重留年者は極力回避するのが大手企業のセオリーとなっています。新卒者に絶対的な価値を置いてます。

やはりこれは、短期間に何十人、何百人も採用するには、確率的にいい人材を見出す方法の一つだと思います。採用がイベント化すればするほど、いろんなキャリアの人が排除され、新卒絶対主義が生まれるのだと思います。

欧州の学生と話す機会がありました。大半の国が働いた経験のない学生を採用しないとのことです。彼らの価値観と日本企業の価値観の違いが如実にでています。どちらも正しく、どちらも正しくない気がします”

oriri

oririの採用はじまります-YOU are (you &) the future.-

“この度、1986年の創業から経営コンサルティングに取り組んできた株式会社コーポレイトディレクションの、新カンパニー「oriri」は、独自の選考スタイルで採用をスタートさせます。これまでコンサルティングファームで、通例的に行われていた採用方式にとらわれず、募集対象を広げ、革新的な採用の視点で、これからの社会で求められる人材採用を目指します。この採用により、多様な人材がチームの価値となり、これからの経営課題に向き合うコンサルティングチームを築いていきます”

<対象>
高等学校/専門学校/短期大学/大学/大学院 いずれかを卒業予定、第二新卒(コンサルティング未経験者)、国籍不問

アイリスオーヤマ

通年採用の導入により多様な人材確保

“日本経済団体連合会が推進している通年採用を、2021年度入社向けの新卒採用より導入します。これにより、海外の大学で学び卒業時期が異なる留学生やスポーツなどの課外活動で十分に就職活動ができない学生に柔軟に対応することで、多様な人材の確保を目指します”

パナソニック

通年採用

“2021年4月以降の入社を対象に通年採用を始めたことを明らかにした。就職活動の開始が遅れがちな海外留学など、学生のさまざまな事情を考慮した採用形態とすることで幅広い人材の獲得を目指す”

アーサー・ディ・リトル・ジャパン(ADL)

採用情報

“ADLは、優れた能力をお持ちの方からのご応募を通年で受け付けております。私たちは採用プロセスを、双方向の評価の場と考えております。私たちにとっては、みなさんにお会いし思考を試す機会であり、みなさんにとっては、ADLとその社員をよりよく理解する機会です ”

カネカ

採用情報

“卒業時期や就職活動時期が多様化する中で、従来の定期採用の枠組みにとらわれず柔軟な採用の枠組みを設けたいと考え、カネカでは2019年より4月と10月のいずれかを入社日とする通年採用をスタートしました。採用対象も新卒学生のみに限定せず、既卒学生や第二新卒の方を対象に加えることで、より多彩な経験・価値観を有する人材とめぐり合うことを期待しています”

<対象>

  • 新卒:2021年4月~2022年10月に4年制大学または大学院を卒業見込みの方
  • 既卒:最終学歴となる大学または大学院を卒業後3年以内であり、就業経験のない方
  • 第二新卒:最終学歴となる大学または大学院を卒業後3年以内であり、就業経験のある方

清水建設

通年採用

“清水建設は、学生の就職に対する意識や就職活動のスタイルが多様化していることなどを踏まえ、2022年4月より、入社の時期を限定せず、一年を通して入社を受け入れる通年採用を開始します。さまざまな経験や価値観を持つ魅力的な人財が集い、育ち、能力を発揮できる会社として、我々の掲げる長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」の実現を目指していきます”

<対象>

  • 卒業後すぐに就職することを選ばなかった方
  • 海外の大学を卒業した後すぐに入社を希望される方
  • 就職後に早期に転職するいわゆる第二新卒の方

新卒採用で通年採用をしている優良企業の募集情報まとめは以上です。ここから先は通年採用についての理解を深めたい方向けの情報をお届けします。

通年採用と新卒一括採用は何が違うのか?

募集期間の違い

新卒一括採用の募集期間は基本的に経団連の指針の内容で決まります。近年は3月から採用広報が開始して、6月から選考が開始するスケジュールです。ただ、外資系企業や一部のベンチャー企業等では数カ月~半年程前倒しでスケジュールを組むケースも見受けられます。

通年採用の募集期間は文字通り、通年です。

募集対象の違い

新卒一括採用では翌年の卒業予定者を指定するケースがほとんどです。

通年採用でも翌年の卒業予定者を指定するケースがありますが、大学生1年生から既卒者・第二新卒者・若手人材(30歳未満)迄、幅広い層を募集対象とするケースも多くあります。

入社時期の違い

新卒一括採用では翌年の4月1日を入社日に指定するケースがほとんどです。

通年採用でも4月1日を入社日に指定するケースが多いものの、求職者の都合に合わせて個別対応をする企業も多くあります。そうすることで、卒業時期の異なる海外留学者の採用に対応可能です。

通年採用新卒一括採用
応募受付期間通年(1年中)期間限定
募集対象幅広い層翌年の卒業予定者
入社時期様々翌年の4月1日
表1. 通年採用と新卒一括採用の違い

学生にとっての通年採用のメリット

就活を後回しにできる

学生は、通年採用では “自分の好きなタイミングで企業の採用選考に応募できる” ので、大学在籍時は自分にとって優先度の高い活動(学業や課外活動など)に集中しやすくなります。

就活を後回しにできるようになることは、限りある大学生活を充実させる意味において大きなメリットです。

万全の選考対策ができる

“自分の好きなタイミングで企業の採用選考に応募できる” ことは、学生は自身の志望企業の選考を通過できるだけの実力を培う時間を十分に確保できることを意味します。

学業に励んで専門性に磨きをかけるも良し、必要なスキルを獲得するための資格取得をするも良し、実用な実務経験を積むために長期インターンシップにコミットするも良し。

志望企業への入社を実現するための万全の選考対策ができるようになります。

志望企業に何度も応募できる

志望企業に落選した場合、学部生であれば就職留年や院進による再応募という手段がありますが、基本的にはチャンスは1回限りですし、就活のための留年や院進はハイリスクです。

しかし、“自分の好きなタイミングで企業の採用選考に応募できる” 通年採用の場合は志望企業A社に応募(大学2年次)→落選→再応募(大学3年次)→落選→再応募(大学4年次)→落選→再応募(既卒)→内定という具合に何度でも応募できます(※)。

※再応募可能になる期間は「1年程度」が一つの目安となります。

学生にとっての通年採用のデメリット

ライバルが増える

新卒一括採用におけるライバルは「卒業年度が同じ学生」ですが、通年採用では「大学1~2年の後輩」「海外大学生」「既卒者(30歳未満)」なども募集対象に含まれるようになります。

また、通年採用の場合は、一定期間を空ければ再応募可能なケースがあるため、「今年は落ちたが、来年こそは…」とリベンジに燃える再応募組が人気企業に殺到することも想定されます。

ライバルが増える(採用倍率が高まる)ことは、学生にとって大きなデメリットになるでしょう。

採用基準が高くなる

新卒一括採用では、応募時期・対象・入社時期に大きな制約がある関係上、企業側はポテンシャル採用にならざるを得ない事情がありますが、通年採用にはその制約がありません。通年採用でポテンシャル採用にこだわる理由が弱くなります。

よって、企業は新卒一括採用で採用できなかった優秀な人材・ユニークな人材・即戦力人材を通年採用で採りたいと考え、新卒一括採用と比較して難度の高い選考・採用基準を設けることが想定されます。

主体的な就活が求められる

新卒一括採用を前提とした就活は、数十万人の学生と数万社の企業が一斉にマッチングに動く超大型イベントであり、就活スケジュールなるものに沿って、周りの人と同じペースで就活を進めることができる良さがありました。

しかし、通年採用を前提とする就活には決まったスケジュールがありません。いつ就活をするのかは一人一人の学生の判断に委ねられます。自分で考えて行動することが苦手な学生にとって通年採用は大きなデメリットになるでしょう。

企業にとっての通年採用のメリット

多様な人材にアプローチ可能

新卒一括採用の場合は対象が「指定する卒業年度に該当する学生、かつ、自社の選考時期に就活をしている学生」に限定されますが、通年採用では対象が「若年層(大学1~2年生)」「既卒者(30歳未満)」などに拡大されます。また、これまではタイミングの(時期的な)問題で日本で就活ができなかった「留学生」や「外国人」にもアプローチすることが可能になります。

見極めの精度を高められる

通年採用では、応募期間や選考期間に定めがないので、選考する企業の側にも時間的な余裕が生まれます。この時間を活用して、選考回数を増やしたり、選考内容をブラッシュアップすることで見極め(評価)の精度を高めることができます。

企業にとっての通年採用のデメリット

予算と工数が膨らむ

通年採用では(採用ブランド力のない企業は)常に募集のための広告投資が必要です。また、学生の応募時期が分散する影響で個別対応が多くなります。短期間で採用活動をまとめて行う新卒一括採用と比較して、予算と工数が膨らむ通年採用は大きなデメリットです。

マッチング率が落ちる

新卒一括採用では学生と企業の双方が期限を意識しているからこそ、活動期間内のマッチング率が高まる特長があります。一方で、通年採用では「期限の意識」が希薄化するため、企業の妥協なき選考(即戦力の優秀層を採用したい意識)が採用工数を増加させ、学生の妥協なき就活(もっと良い会社を目指す意識)が内定辞退を増加させる傾向が強まります。

通年採用のトレンド

通年採用は一過性のブーム?

通年採用は、新卒採用市場にどの程度浸透しているのでしょうか?

就職みらい研究所の発表する「就職白書2021」によると、企業各社の2022年卒採用の方法・形態の中で、通年採用が27.0%(前年差+7.8ポイント)と大幅に増加見込みであることが分かります。

2022年卒採用の方法・形態を見ると、①採用方法では「リファラル採用(社員などからの紹介を通じた採用)」が23.9%(前年+7.1ポイント)、②採用ターゲットでは「大学・大学院卒業後3年以内の既卒者の採用」が39.6%(同+18.6ポイント)、③採用時期では「通年採用」が27.0%(同+7.8ポイント)と2021年卒と比較して増加する見通しである

参考:就職白書2021(P18)|就職未来研究所

また、経団連が調査した「2021年度入社対象 新卒採用活動に関するアンケート結果」を見ても、通年採用が普及していくポテンシャルを推し量ることが可能です。

新卒採用において通年採用を実施している企業は実施予定を含めると2割強、検討中を合わせると6割弱。実施方法については「1年を通して実施」する企業が約5割

今後5年間程度の方向性としては未定との回答が多いが、増やしていくとした企業が2割弱

参考:2021年度入社対象 新卒採用活動に関するアンケート結果 (P12)|一般社団法人 日本経済団体連合会

さらに、ビズリーチ社の手掛ける採用管理クラウド「HRMOS採用」では通年採用対応の新卒エディションが誕生する等、企業の通年採用を採用支援会社側から後押しする動きも見受けられます。

これらの状況を踏まえると、通年採用は一過性のブームに留まらずに、新卒採用市場に根付いていく兆しがあると推測されます。

通年採用とジョブ型雇用

日本の正社員の雇用システムは、新卒一括採用・年功序列型賃金・終身雇用がセットになったメンバーシップ型雇用が主流です。

その上で、近年では「国内外の優秀人材を採用するには賃金制度自体の見直しが必要とされている」「新卒社員の給与を上げ続けること、雇用し続けることが企業体力の面で困難になりつつある」などのメンバーシップ型雇用の制度疲労が表面化する中で、その問題解決の糸口としてジョブ型雇用が注目されています。

<ジョブ型の雇用システム>
・コンセプト:就職
・職種・勤務地:限定
・労働時間:限定
・雇用期間:有期
・雇用形態:正社員・契約社員・アルバイト
・解雇:比較的容易に可能
・主な採用方法:中途採用・社内公募
・賃金制度:職務給
・能力開発:本人主導

<メンバーシップ型の雇用システム>
・コンセプト:就社
・職種・勤務地:無限定
・労働時間:無限定
・雇用期間:無期
・雇用形態:正社員
・解雇:かなり困難
・主な採用方法:新卒一括採用
・賃金制度:年功序列型賃金
・能力開発:会社主導

このように、ジョブ型とメンバーシップ型の雇用システムは様々な面が異なるため、これまでメンバーシップ型の雇用システムを採用していた企業が、ある日突然、ジョブ型の雇用システムに全面的に切り替えることは現実的ではありません。

おそらくは、「40代以上の社員」や「管理職への昇進を希望しない社員」のような、一部の年代・役職・職種・キャリアコースに限定する形での “緩やかな” ジョブ型雇用の導入が進むことが考えられます。

この流れの中で、ジョブ型の雇用システムを適用する職種・キャリアコースの新卒採用を実施する際に、新卒一括採用ではなく、通年採用(中途採用の一般的な採用方法)を選ぶ企業が増えることが予想されます。

雇用システムの違い(ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用)
表2. 雇用システムの違い(ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用)

終わりに

新卒採用は、新卒一括採用から通年採用に切り替わるのか?

答えは「半分YESで半分NO」です。今後、通年採用を実施する企業が増えるとは思いますが、新卒一括採用は廃れることはなく、通年採用と共存していくものと考えられます。

通年採用は万能ではないし、新卒一括採用の上位互換ではない。通年採用には通年採用の良さがあり、新卒一括採用には新卒一括採用の良さがある。この認識のもとに学生と企業の両者が「通年採用ブーム」に流されることなく、それぞれにとっての最適な就職活動・新卒採用活動を選択されることを願います。

執筆者はこの人!

池田 信人

自動車メーカーの社内SE→人材紹介会社の法人営業→就活支援会社の事業企画・メディア運営→独立。ニャンキャリアを運営。Twitterはこちら

公開日 2019-07-05 最終更新日 2022-07-24