「あなたの長所と短所(強みと弱み)を教えていただけますか?」
就活や転職活動の面接で頻出する長所と短所(強みと弱み)の質問についての対策を解説します。
面接で長所と短所(強みと弱み)を質問する理由
面接の一つ一つの質問には、企業側の意図が込められています。それでは「長所と短所(強みと弱み)」の質問にはどんな意図が隠されているのでしょうか?
この意図を知ることが面接で高評価を得るための近道です。
伸びしろ(ポテンシャル)を知りたい
人は誰もが長所と短所(強みと弱み)を持っているものですが、日常をのほほんと過ごしている間は自身の本質的な長所と短所に気付くことはありません。
何かしらの目標に向かって自分の全力を傾けること、その上で、その過程(プロセス)における自身の思考と行動を振り返ること。そうすることで、初めて自分自身の本質的な長所と短所を表す言葉に出会うことができます。そして、人は自分の長所と短所を客観視できるようになると、長所を磨くため、短所を補うための努力をすることができるようになります。
この事実を知っている企業は「目の前の候補者(自社の選考応募者)が努力をできる人なのかどうか? 伸びしろ(ポテンシャル)がどの程度あるのかを推しはかりたい」と考えながら、面接の場で長所と短所(強みと弱み)を質問しています。
自社のカルチャーに合うかを知りたい
長所と短所(強みと弱み)は、仕事に取り組む姿勢や仕事の進め方の癖として普段の仕事に現れてきます。つまり、企業としては面接時に長所と短所(強みと弱み)を質問することで、自社のカルチャー(組織風土)との相性判断することが可能になります。
どんなに能力やスキルに優れる人材であっても、カルチャーがミスマッチだと本来の力を発揮することができません。また、仮に本来の力を発揮できたとしても、既存の組織を破壊してしまう悪影響を及ぼしかねません。
この企業と求職者の双方にとって不幸な事態を招かないように、企業は面接時に長所と短所(強みと弱み)を質問しています。
自分の長所と短所(強みと弱み)を知る方法
自分が頑張った経験を振り返る
採用面接で問われる長所と短所(強みと弱み) は「あなたが仕事を遂行する上での長所と短所」です。仕事経験がほとんどない学生の場合は「自分が何かに頑張る上での長所と短所」と置き換えていただいて大丈夫です。
というわけで、過去に自分が頑張った経験を振り返ってみましょう。振り返るべきは結果の良し悪しではなく過程(プロセス)です。自身が何かしらの目的や目標の元に一生懸命頑張った日々の中に、採用面接で伝えるべき長所と短所のヒントが隠されています。
ちなみに、派手な成果が出た経験があっても、それが「自分が」頑張った経験ではない場合、振り返り対象としては不適切です。
ストレングスファインダーを使う
ストレングスファインダーはWebサイト上で177個の質問に答えることで、34の資質の中から最も特徴的(優先度の高い思考、感情、行動のパターン)な5つを診断結果として得られるオンライン「才能診断」ツールです。
診断ツールの弱点である「診断結果は分かったけど、これをどう活用すればいいのか?」という点をカバーできるだけの具体的な解説が秀逸で、就活の最前線で実践投下できる自己分析ツールです。自分の長所(強み)を発見する上でも有効活用できます。
<参考情報>
・さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0
ストレングスファインダーは有料(書籍版の場合は2,000円程度)ですが、無料で使える適性診断ツール群よりも圧倒的に実用的です。
リクナビやマイナビ等の就活サービスやdodaやリクナビNEXT等の転職サービス利用時に無料で使える適性診断ツールを使ってみた上で、いまひとつ自身の強みが分からない場合にストレングスファインダーを使ってみるのも良いでしょう。
友人知人に自分の長所を聞く
自己分析のフレームワークで知られる「ジョハリの窓」の中に、他人は知っているが自分が知らない自己の領域(盲点の窓)があります。
自分が無意識的にできてしまっているがゆえに、自身では強みとは思っていないことが、他人からは「それはあなたの強みですよね」と思われているケースがあります。
そこで、あなたの友人知人(できれば、あなたの頑張りを見ている人物)に自分のどんなところに強みがあるかを聞いてみることをお勧めします。
短所起点で長所を考える
「自分自身の長所は分からないが、短所は分かる」。
多くの人に共通する、この事実(短所は分かる)を起点に長所を考えることができます。参考までに、短所と表裏一体にある長所の例をご紹介します。
短所 | この短所と表裏一体の長所 |
視野が狭い | 集中力が高い、突き詰めて考えることが得意 |
頑固 | 意見にも自分の意見を曲げない心の強さを持っている |
協調性がない | 度胸がある、易きに流れない意思の強さがある |
忘れっぽい | 楽観的に物事に向き合える、ストレス耐性が高い |
心配性 | 失敗するリスクに向き合える慎重さがある |
せっかち | スピード感がある、行動力が高い |
優柔不断 | 周りの人の意見を考慮することができる |
長所と短所(強みと弱み)の伝え方
企業の求める人物像と一致度の高い長所を伝える
企業には、それぞれに求める人物像というものがあり、選考を受ける側としては「私は御社の求める人物像に合致しています」ということをアピールする必要があります。
企業によっては求める人物像を明示していないケースもありますが、そういった場合でも「仕事内容」「社員インタビュー」「IR情報」等の情報を読み解く中で、求める人物像を予測することは可能です。
その上で、企業の求める人物像と一致度の高い強みを伝えると良いでしょう。そうすることで高評価を得やすくなります。
短所は短所であることを明確に伝える
短所を伝える際は、その短所が短所であることが明確に伝わる表現を考えましょう。面接では短所を説明しているつもりが、長所を説明してしまっているケースが頻発します。
面接官:あなたの長所と短所をお聞かせいただけますか?
学生:私の長所は行動力がある点です。短所は考えるよりも行動が先に立つ点です。
この面接のワンシーンにおいて…
「考えるよりも行動が先に立つ」という短所は「行動力の高さ」という長所を言い換えただけのように解釈可能ですので、面接官からは「この人は短所を自覚していない=自己理解力が不足している」という理由でマイナス評価をされる可能性があります。
短所は短所として伝わるような表現を考えましょう。
短所はどのように補っているのかをセットで伝える
短所は基本的にネガティブなものですが、その短所を自己認識した上で、どのように短所を補っているのかを伝えることが大切です。
そうすることで「自分の短所を補う(あるいは克服する)ための努力をしているんだな」と、面接官からプラスの評価を引き出すことができます。
例えば、「計画性がない」という短所は「計画を作成・管理できるツールを活用すること」で補うことができます。例えば、「独断的」という短所は「チームの意見を吸い上げるためのMTGを定期的に開催すること」で補うことができます。
もちろん、実際に短所を補っている事実があることが前提です。その場しのぎで嘘をつくのは止めましょう(熟練の面接官は質問を重ねることで嘘を見抜きます)。
長所(強み)と短所(弱み)の一覧表
長所の一覧表
長所(強み)と、その長所が意味する内容をご紹介します。また、応募企業(職種や仕事内容)によって長所の使い分けをする際には「長所が活きる仕事」の欄を参考にしてみてください。
長所 | 長所の内容 | 長所が活きる仕事 |
行動力 | 自分が考えていることを即座に行動に移すことができる | スピード感(試行錯誤)が求められる仕事 |
柔軟性 | 意見の衝突や利害が対立する場面で上手く調整できる/全体最適で物事を考えることが得意 | 利害関係者・共同作業が多い仕事 |
主体性 | 自分事として物事を捉えて積極的に行動できる/周囲の人間を引っ張るのが得意 | リーダーシップの発揮が求められる仕事 |
粘り強さ | 物事が完遂するまで根気強く粘ることができる/泥臭く頑張ることが得意 | やり切る能力が求められる仕事 |
責任感 | 自分の責任範囲においてやるべきことを徹底することができる | 責任範囲が明確に切り分けられた仕事 |
協調性 | チーム全体のパフォーマンス向上に取り組むことが得意 | チームワークが要求される仕事 |
計画性 | やるべきことの段取りを組むことができる/先読みをするのが得意 | 長期間にわたって取り組む必要性のある仕事 |
負けず嫌い | 他人との競争が求められる状況において大きな力を発揮することができる | 営業職などの定量的な目標を設定しやすい仕事 |
謙虚さ | 人の意見を素直に受け入れることができる/成功に慢心せずに地道に頑張ることが得意 | 継続的に結果を出し続けることが求められる仕事 |
誠実さ | 高い倫理観を持ち、仕事相手とも正直に向き合うことができる | 一段高い倫理観が求められる仕事 |
臨機応変 | その場その場で適切な行動を取ることができる | 変化の多い仕事、アドリブが要求される仕事 |
ストレス耐性 | ストレスへの対処が上手く、心理的負荷の強い状況でも頑張れる | 他部署や顧客からのプレッシャーがかかる仕事 |
論理性 | 筋道を立てて物事を考えることができる/主観ではなく客観的なもの(数字)を元に思考することができる | 分析や考察等の論理的思考力が要求される仕事 |
向上心 | 現状に満足せずに、より高みを目指す意思を持ち続けることができる | 新規性の強い仕事、熟練度が要求される仕事 |
短所の一覧表
短所(弱み)と、その短所が意味する内容をご紹介します。また、応募企業(職種や仕事内容)によっては伝えるべきでない短所がありますので「短所が致命的となる仕事」の欄を参考にしてみてください。
短所 | 短所の内容 | 短所が致命的となる仕事 |
心配性 | 行動を起こすことが苦手/物事を慎重に考えすぎている | スピード感(試行錯誤)が求められる仕事 |
優柔不断 | 物事の決断や判断をするのが苦手 | 利害関係者・共同作業が多い仕事 |
計画性がない | やるべきことの段取りが苦手/先のことを考えずに行動してしまう | 長期間にわたって取り組む必要性のある仕事 |
頑固 | 意見の衝突や利害が対立する状況において上手く調整することが苦手 | 利害関係者・共同作業が多い仕事 |
主体性がない | 自分から積極的に行動をするのが苦手/指示待ち・受け身な姿勢が出やすい | リーダーシップの発揮が求められる仕事 |
飽き性 | 物事に取り組むが諦めが早い/コツコツと頑張りを積み上げることが苦手 | やり切る能力が求められる仕事 |
視野が狭い | 一つのことに集中し過ぎて、周りが見えなくなってしまう | 部署内のチームワークや部門間連携が必須となる仕事 |
おわりに
実は、面接時の「長所と短所(強みと弱み」の質問の重要度はそこまで高くありません。就活であれば「自己PR」や「志望動機」の質問の方が重要です。転職活動の場合は「職務経歴」や「転職理由」の質問の方が重要です。
しかし、だからといって、それが長所と短所の質問の回答の備えを疎かにする理由にはなりません。なぜなら、面接選考はある種の勝負事であり、その “場の流れ” があるからです。
時に、たった一つの質問の回答が面接の場の流れを変えるのです。ゆえに、面接の場の流れを良い方向に変える手段の一つとして「長所と短所(強みと弱み)」の質問についての備えをきちんとしておくことを推奨します。
執筆者はこの人!

転職支援のプロ。人のキャリアは地続きになっているので転職した瞬間に薔薇色の展開が拓けるなんてことはないのだから、今をしっかり生きましょうと伝えたい派です。
公開日 2019-07-20 最終更新日 2022-06-25