金のオファーレター

むかしむかし、あるところに、内定先から授かったばかりのホクホクなオファーレター(採用通知書)をニヤニヤと眺めながら歩いている若者がいました。

推定年収240万円の普通なオファーですが、若者にとっては特別なオファーレターです。度重なる選考を通じて苦労して手に入れたのですから、ニヤニヤが止まりません。

その時! 

「ピューッ」と突風が吹きつけ、若者がぎゅっと握っていたオファーレターをさらっていったのです。若者は、ひらひらと宙を舞いながら飛んでいくオファーレターを追いかけました。しかし、オファーレターは、自ら意思を持ったかのように、若者が伸ばす手をひらりひらりと避けながら風に乗って飛んでいきます。

若者はオファーレターを追いかけました。ひたすら追いかけましたが風に運ばれるオファーレターには手が届きません。やがて、オファーレターは若者をはるか後方に置き去り、ゆらゆらと下降し、小さな泉に落ちてしまいました。若者が小さな泉に到着する頃には、もう手遅れでした。泉の真ん中に落ちたオファーレターには手が届きません。

水の中に沈んでいくオファーレターを前に、若者は呆然と立ち尽くすしかありません。すると…なんということでしょう? 泉の中から女神様が出てきたではありませんか!?

金のオファーレター

女神様:シャバダバシャバダバ~♪ 久しぶりのシャバよ! くぅ~、空気がウマい!

若者:……

女神:…コホン、貴方が落としたのは年収600万円のメガベンチャーR社の銀のオファーレター? それとも、年収1,000万円の戦略コンサルティングファームM社のオファーレター?

若者:えっ

女神:さぁ、遠慮せずに答えなさい~♪

若者:いえ、私が落としたのはどちらでもありません。

女神:なんですと!? 今時、こんな正直者がいるなんて私は感動したわ! 金銀両方のオファーレターをあげるわ!

若者:いえ、私が落としたのは年収2,000万円の外資金融G社のプラチナオファーレターです!

女神:えっ

若者:おっ、女神様ともあろう方がプラチナオファーレター持っていないのですか?

女神:……(まさか、予想の斜め上の大嘘をつくなんて信じられないけど…それも人間の業の深さなのね……でも、それも欲に正直という意味でアタシは嫌いじゃないわ…)

若者:女神様?

女神:あ…あるわよ……プラチナオファーレター。もってけドロボー!

こうして、若者は大嘘をついてプラチナオファーレターを手に入れました。しかし、この時、若者は年収の高さが意味することを理解していませんでした。年収には金額相当のパフォーマンスを要求されるということを。

若者は、プラチナオファーレターの発行元企業「外資金融G社」で働き始めるも、圧倒的なパフォーマンス不足で試用期間中に解雇されたのです。

おしまい。

執筆者はこの人!

池田 信人

自動車メーカーの社内SE→人材紹介会社の法人営業→就活支援会社の事業企画・メディア運営→独立。ニャンキャリアを運営。Twitterはこちら

公開日 2021-12-19 最終更新日 2022-07-15