【就活寓話】浦島太郎と株式会社竜宮城

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むかしむかし、あるところに、浦島太郎という若者がいました。

<目次>

  • 浦島太郎と株式会社竜宮城
    – CEO乙姫との出会い
    – 宴会部長の仕事
    – 転職エージェントとの対峙

浦島太郎と株式会社竜宮城


ある日、浦島は海辺でいじめられていたカメを助けました。するとカメは「お礼です」と言いながら、浦島に茶封筒を差し出しました。

中には、オファーレター(採用通知書)が入っていました。 “株式会社竜宮城” と書かれていましたが、浦島はそんな会社のことなんて知りません。

浦島が困惑していると、カメは自身が株式会社竜宮城の人事責任者であることを打ち明けました。そして、あなたは素晴らしい若者だから竜宮城に一度来て欲しいとお願いをしたのです。

そこまでおっしゃるなら……と、浦島は竜宮城に行くことにしました。

CEO乙姫との出会い

カメ:着きましたよ。ここが竜宮城です。

浦島:わぁい!

乙姫:ようこそ竜宮城へ。CEOの乙姫です。

浦島:こんにちは浦島です。

乙姫:あなたが当社の超難関試験、通称 “海辺でいじめられているカメをどうするのかケース選考” を突破した噂の大型新人さんね。当社での活躍を期待してるわよ。

浦島:ちょっと待ってください。僕はまだ入社するつもりはありませんよ。御社のことについてお聞きした上で、入社意思の判断をします。

乙姫:あら、そうなのね。聞きたい事は何かしら? どんな事でも包み隠さずに伝えるわ。

浦島:では遠慮なく。待遇は?

乙姫:年収1,000万。

浦島:すごっ!!!

乙姫:竜宮城内にある4LDKの個室にも無料で住めるわよ。Door-to-Doorで1分で出社できるわ。

浦島:やった!!!

乙姫:朝昼夕食も無料提供。なんと、夕食は宴会形式よ。

浦島:うほー!!!

乙姫:そして、なんとなんと、ウフッ、私が直々にモーニングコールしてあげるわ!

浦島:ふーん…(ハナホジ)

乙姫:ちょっ…なッ、何よ!? モーニングコール要らないの?

浦島:モーニングコールに興味ないっす。しかし、なぜこんなに高待遇なんですか?

乙姫:ウチは業績好調の優良企業で財務的には外部機関からAAAの評価を得るぐらいには健全経営だから、これぐらいの待遇は当然なんだけど、ところでモーニングコールは本当に要らないの?

浦島
:なるほどー、凄い経営手腕ですね! だがモーニングコールは不要。

乙姫:・・・チッ(舌打ち)

浦島:何か言いましたか?

乙姫:ううん、何でもないわ。待遇の話はこれぐらいにして、他に聞きたいことはある?

浦島:仕事内容は? 僕は企画のお仕事をやってみたいんですよね。

乙姫:ウチは日本海域では老舗の海底旅館よ。浦島君には宴会企画部に所属してもらうわ。宴会を “企画する” 仕事よ。 

浦島:それはやりがいがありそう!

乙姫:入社する気になったかしら?

浦島
:ええ、もうかなり入社に前のめり状態です。あと、もうちょっとだけ背中を押してもらえれば……

乙姫:あらやだ、交渉上手なのね。分かったわ。今、この場で入社意思を決められるなら特別なポジションに就かせてあげるわ!

浦島:と、特別なポジション…(ごくり)

乙姫:“宴会部長” のポジションよ!

浦島:“宴会部長” キタコレ!!

乙姫:どうかしら?

浦島:入社します!

乙姫:契約成立ね。それじゃあ……パァン!パァン!(手を打ち鳴らす音)

カメ:お呼びで?

乙姫:ひそひそ…(雇用契約書の中に「乙姫のモーニングコール付き」って書き加えておいてもらえるかしら?)

カメ:ひそひそ…(勝手にモーニングコールを付けるのは不味いのでは?)

乙姫:ひそひそ…(気付かれないようにフォントサイズを極小にしておきなさい)

カメ:ひそひそ…(御意)

浦島:何を話しているんです?

乙姫:ふふっ、何でもないわ。そうだ! 竜宮城の中を案内するわ。楽しいわよ~?

浦島:わぁい!

宴会部長の仕事

さて、晴れて「株式会社竜宮城」の社員となった浦島は、初出勤の日を迎えました。

浦島:おはようございます。

乙姫:おはよう。今日は初出勤ね。7時始業だから遅刻するか心配だったけど安心したわ。

浦島:4時に乙姫CEOがモーニングコールを下さったお陰です(#^ω^)ピキピキィ

乙姫:そう、よかったわ。あなたの上司を紹介するわね。

イカ:君が浦島君だね? 私は宴会事業本部 本部長のイカです。

浦島:初めまして、宴会事業本部 宴会企画部 宴会部長の浦島です。

イカ:いきなり “宴会部長” の肩書を持つとは、君は相当なやり手だね。期待しているよ。

浦島:はい。

乙姫:というわけだから、後はよろしくね~。

イカ:御意。それでは浦島君、早速仕事を始めようか。

浦島:よろしくお願いします。

イカ:では、タイやヒラメの宴会タレントの出演ローテーションを組んでもらえるかな?

浦島:あれ?  企画の仕事っぽくないですね?

イカ:ああ、通常の “宴会部長” は宴会芸を企画するのが仕事なのだが、ウチぐらいの企業規模ともなると分業制だから、企画立案は外注先の宴会タレントマネジメント会社に丸投げでOKだ。

浦島:なるほど。

イカ:じゃあ、来月分の宴会タレントたちの出演ローテーションしくよろ~。

浦島:分かりました、、、、終わりました!

イカ:はやっ! どれどれ、、、タイ、ヒラメ、タイ、ヒラメ、タイ、ヒラメ……なるほどこれは上手いローテーションの組み方だな。素晴らしいじゃなイカ! 今日の仕事は終わりだ。定時まで自由時間でいいよ。

浦島:あっ、はい(ぬるい仕事だな、いや、僕が優秀過ぎるのか?)

定時までは、あと7時間55分ありました。

普通の感覚であれば手持ち無沙汰になるものですが、浦島は窓際のデスクに戻るなり、手慣れた様子でマインスイーパーを始めました。

そう、彼は生粋のマインスイーパーマンだったのです。当然のように定時のチャイムが鳴るまで、マインスイーパーに没頭しました。

次の日も、次の週も、次の月も、

浦島の “宴会部長” としての仕事はぬるいままでした。でもマインスイーパーは楽しかった。浦島はマインスイーパーと共にありました。

転職エージェントとの対峙

そして10年の歳月が流れました。

浦島の年収はなんと1,500万に到達。宴会事業本部の本部長に出世を果たしていたのです。しかし、相変わらず仕事はぬるいままです。

浦島はこのままでは良くないと思い、転職を決意して、転職エージェントに接触しました。

ですが……

浦島:そんな……嘘だと言って下さい!?

転職エージェント:浦島さん、これは現実です。年収1,500万の維持が前提だと貴方に提案できる求人は0件ですよ。

浦島
:ぐぬぬ、じゃあ年収1,000万まで下がっていいので、それで求人を探してもらえます?

転職エージェント:冗談きついですよ。あなたのスキルの市場価値は年収300万程度です。

浦島:なんでそんなに低いの?  僕は一流企業の株式会社竜宮城の宴会事業本部の本部長なんですよ?

転職エージェント:肩書なんてどうでもいい。大切なのは「あなたは何ができるか?」です。

浦島:僕は…

転職エージェント:・・・

浦島:僕は…僕は……

転職エージェント:・・・

浦島:マインスイーパーができるッ!!!

転職エージェント:仕事は遊びじゃねぇんだよぉおお!  おおぉん!?

浦島:うわぁああん!!!

そう、そうなのです。

浦島は竜宮城で過ごす中で、転職市場で評価されない人材に “老いて” しまっていたのです。

おしまい。

(池田 信人)

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