【就活寓話】オオカミと7人の内定者

Pocket

オオカミの入室を防ぐ内定者の猫

むかしむかし、あるところに、内定者研修の会場である山荘に向かう「ヤギ製紙」の人事と7人の内定者がいました。

山荘に着くなり、人事は言いました。


人事:お前たち。私は突発業務で会社に出かけてくるから、ちゃんと留守番をしているのですよ。それから、この付近でオオカミの目撃情報もあるらしいから用心しなさい。

内定者一同:うわー、怖ぇよー。

人事:大丈夫、大丈夫。山荘の中にいれば安全よ。でもね、オオカミは嘘つきだから騙されないように気をつけるのよ。

内定者のひとり:どうすればいいの?

人事:もし、オオカミが訪ねて来ても耳を貸してはダメェエエエーよ。居留守を使いなさい。

内定者一同:はーい。


内定者たちは、人事を見送ると山荘の玄関のドアに鍵をかけました。

さて、しばらくすると山荘にオオカミがやって来て玄関前でこう言いました。


オオカミ:内定者のみなさん、こんにちはオオカミです。ご提案があるのですが話を聞いていただけませんか?

内定者一同:・・・

オオカミ:私は「ヤギ製紙」の内定者のみなさんを口説きに来ました。

内定者一同:!?

オオカミ:あなた方には明るい未来がある。だがそれはヤギ製紙をファーストキャリアに選んだ先にはない。その事実をお伝えしたいのです。話を聞きたくありませんか?

内定者一同:ざわ… ざわ…ざわ… ざわ…

オオカミ:玄関のドアはこのままで結構。ドア越しに話をしますので、話を聞く意思があれば返事をお願いします。

内定者のひとり:ととと、とりあえず話を聞かせてください!

オオカミ:分かりました。それでは話を続けますね。「ヤギ製紙」をファーストキャリアに選んだ先にはない明るい未来がない理由。それは国内の製紙産業が縮小マーケットであるからなのです。需要が減っていく中で業績を伸ばすことはとても難しいのです。

内定者のひとり:オオカミさん、それぐらいのことは承知していますよ。会社説明会でも「これからは海外マーケットに挑戦することで業績を伸ばしていく」という話を聞きましたし。

オオカミ:なるほど。海外マーケットですか。では私はこう問いたい。ヤギばかりを採用している「ヤギ製紙」の多様性のない組織がグローバル展開に対応できるのかと?

内定者のひとり:ヤギだけでも、いいじゃないですか!  ヤギ万歳ッ!!

オオカミ:ふむ、、では質問を変えます。「ヤギ製紙」は同規模の売上の競合他社に比べて20%ほど利益率が低い。競争力がないということです。これはなぜでしょうか?

内定者のひとり:「ヤギ製紙」の紙は品質重視で原価がかかると聞いていますが?

オオカミ:品質重視と言えば聞こえは良いですが、その品質はグローバルマーケットが求めるものではありませんよ?

内定者のひとり:なんで断言できるんですか?

オオカミ:「ヤギが食べてもおいしい紙」という品質は確かに高品質ですが、その品質はヤギにしかバリューがないんですよ。普通、紙は食べませんし。

内定者一同:マジで?

オオカミ:マジですよ。紙は食べるものではない。常識ですよ。ほら? これがヤギばかり採用している組織の弊害の一端です。

内定者のひとり:なるほどです。オオカミさんの話をお聞きして「ヤギ製紙」の良い面しか見えていないんだなってことに気付けました!

オオカミ:お力になれて良かったです。

内定者のひとり:人事の八木さんからは「オオカミには気を付けるように」と言われていたのですが、あなたは、ひょっとして良い人なのですか?

オオカミ:私は見た目はオオカミですが、人は見かけじゃないと思ってもらえると嬉しいです。オオカミが「嘘つき」というレッテルを貼られやすいことは承知していますから、私は人一倍、誠実である態度を取るようにしてきました。実際に、他人からは良い人だとよく言われますよ。

内定者一同:オオカミさん…

オオカミ:それに、これはあまり声を大にして言いたくはありませんが……その人事の八木さんの方こそ、会社の不都合な真実を隠しているという意味では「嘘つき」ですから、彼女こそオオカミなんじゃないですかね?

内定者一同:!!!

オオカミ:コホン…よろしけば、これから場所を変えて、内定者のみなさんひとりひとりと膝を詰めてお話をできればと。皆さんに相応しい将来性のある企業をご紹介しますよ? あっ、そういえば名刺をお渡ししていませんでしたね? 玄関のドア、空けてもらえます?

内定者一同:メ、メェエエエー、名刺交換お願いします!

内定者たちはオオカミと名刺交換をするために、とうとう玄関のドアを空けてしまいましたとさ。

おしまい。


あとがき


就活や転職活動においては、誰もがオオカミ(嘘つき)になる可能性を持っています。

それぞれの立場で、ご自身の言動を振り返ってみると良いと思います。

・人事
求職者に自社の不都合な真実(採用上のネガティブポイント)をフェアに情報公開していますか?

・求職者と利害関係のある人(人材業界関係者)
求職者ファーストでの情報提供やアドバイスができていますか?(自分の面子や自社の売上を優先させてはいませんか?)

・求職者と利害関係のない人(親や友人、大学教授など)
求職者に対して、間違っている情報やアドバイスを一方的に押し付けていませんか?

・求職者
選考の場や相談の場で、相手に事実と異なる情報を伝えていませんか?  そして何より、自分自身に嘘をついていることはありませんか?

(池田 信人)

※本記事は筆者がnoteに過去公開していた記事を再編集した内容となります。

Pocket

スポンサーリンク